大好きなお風呂(8)
- fairfax3939
- 2017年1月5日
- 読了時間: 2分

家での暮らしが始まりました。父は毎日、お風呂に入りました。
仕事から急ぎ帰ると、父の入浴タイムです。
父が家のお風呂に入るためには脱衣所と風呂場の段差解消(15㎝)が必要でした。これは工務店のHさんにステンレス製のスロープを作っていただき、椅子にキャスターが付いたような入浴用車椅子でそのスロープを下ることで解消しました。
決して広くはない家庭用のお風呂に、父と母、二人が湯船につかっている図は最初不思議な感じでした。そもそも両親の裸など、久しく見たことがありませんでしたから。
湯船につかると、父は「あぁ~~~」と大きく一息つくのです。
右足は当時、象の足のようにむくんでいました。麻痺した右半身はいつも冷たかった。
常に血行不良気味だった体が温まっていく感覚は、心底が気持ちがよかったのでしょう。
この声を聞くだけで家に連れて帰ってよかったと母は言いました。
そして、二人は「知床旅情」を歌うのです。
父は「知床旅情」だけ、何となく「知床旅情」とわかる風にデュエットできたのです。
湯気の中の中の二人と、お風呂場に響く母のソプラノと父の声が今でも耳に残っています。
お風呂は気分転換のための大事なツールでした。自分の意思を伝えることができない父は常にストレス満タンでした。イライラを募らせて、どうしようもなく不機嫌な時でも、
「お父さん、お風呂入ろうか」
「お父さん、ドライブ行く?」
この二つの提案に、父はiいつも「イエス」でした。
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