「じたばたしなさんな」(2-1)
- fairfax3939
- 2016年12月25日
- 読了時間: 1分

緊急搬送された病院で、父は脳塞栓による脳機能障害、右半身の麻痺と失語症と診断されました。集中治療室の父は視点をさまよわせ、意味不明の大声を張り上げて、もう人でなくなってしまったよう…。
「お父さん、生きている方がかわいそうだな」
厳しい現実を覚悟しました。
血栓を溶かすための点滴が行われました。しかし、数日後、血液をサラサラにしたことで別の血栓が左足に詰まり、父のふくらはぎはカエルのお腹のようにパンパンに膨れ上がりました。もし、血栓が流れなければ、左足を切断することになると言われました。意思も通じず、言葉も話せず、右半身は麻痺し、その上左足が切断されたらどうなるのか。私はガタガタと震えて、歯がかみ合わなくなりました。この状況が現実なのか、何なのか、こんなことが自分の人生に起こるとは信じられず、テレビドラマを観ているようでした。
そのとき取り乱す私に母が言ったのです。
「じたばたしなさんな」
その口調はとても静かでした。家族のための控室、正座して、視線を畳に落とし、口をきっと結んだ母の横顔が私に刻まれています。
私もこの時の母の年齢に近づきました。
今の私にこんな受け止めができるだろうかと思います。
(続く)
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