

途切れたページ(16)
「二月九日 ごはんを食べたりコーヒーを飲むたびにお母さんも早く帰ってくるといいねと言います。」 日記は途切れました。 この頃のことは今まで、あまり思い出そうとしたことがなかったと気付きました。 無意識に避けていたのだと思います。...


小さな「できる」が見つかった(4-2)
母には持病がありました。自分に弱いところがあっては父の介護がままならないと、父の病態が落ち着いた頃、母も入院しました。この時、母が顔を見せないことを不審に思ったのでしょう。父はしきりに何かを訴えました。事情を繰り返し答えるのですが理解できません。「はいよぉ~!!!」と連呼し...


小さな「できる」が見つかった(4-1)
緊急搬送された病院の集中治療室は元気になって病室を移る患者さんはいませんでした。次々、亡くなるのです。このままでは父も…と危惧されて、入院から一カ月後、T病院に転院しました。 転院したとたん、先の病院で院内感染していたことがわかり、抗生剤やら何やら、点滴の針が8か所にささり...


「じたばたしなさんな」(2-1)
緊急搬送された病院で、父は脳塞栓による脳機能障害、右半身の麻痺と失語症と診断されました。集中治療室の父は視点をさまよわせ、意味不明の大声を張り上げて、もう人でなくなってしまったよう…。 「お父さん、生きている方がかわいそうだな」 厳しい現実を覚悟しました。...


22年前のあの日(1)
今から22年前の1994年3月12日、私は両親と森山良子さんのコンサートに行く予定でした。 仕事から急ぎ帰ると、父がその日、何か調子が悪く、病院に行ったと言うのです。父は二人で行って来いと言うけれど、母も心配だから行かないと言うし、結局、チケット3枚無駄にしたのです。...