父の再生。光の先にあるもの(10-1)
- fairfax3939
- 2017年1月8日
- 読了時間: 2分
退院から1年余り経った頃でした。
週末のある日、父が麻痺側の右足に、つま先から足の付け根までの長い装具を付け、小さな脚立のような杖をついて、家の廊下を歩いていました。
「嘘でしょ…」狐につままれました。
退院したT病院では、「歩く見込みはない」と診断され、退院後、歩行訓練を受ける機会は与えられませんでした。
それでもあきらめきれない母はリハビリで有名なN病院をみつけてきて、週1回の自主練習の日に通ったのです。介護福祉士の方にあれこれ相談し、歩行訓練を受ける機会を得て、装具も作ってもらいました。
とはいえ、私は父が歩くことができるようになるとは思っていませんでした。
なぜって、信頼する医師が「歩くのに必要なこの筋肉が完全に麻痺しているので、歩くことは難しい」とはっきり言ったのですから。
でも、母は「階段を上がって、お父さんを玄関から出入りさせる」という目標を掲げて、車で片道2時間の道のりを通ったのです。母が遠くまで運転するのはどうかと思ったけれど、意気揚々と楽しそうだったので、日帰りドライブがメインなのかと思っていました。
ところが、父と母は本当に目標にチャレンジしていたのです。
そして、退院から1年後、父はおっかなびっくり歩いて見せました。
呆然とする私に母は「お父さんが歩いてくれないと、私が大変だから」と、シラッと言いました。

(続く)
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