「じたばたしなさんな」(2-2)
- fairfax3939
- 2016年12月25日
- 読了時間: 1分
母は愚痴や泣き言を言わない人でした。でも、一度だけ「今日だけは堪えられない」と膝をついて泣いたことがありました。母は涙をぽろぽろこぼすのではなく、目の周りを涙でくしゃくしゃに濡らして泣くのです。あの日、何があったのか、聞かなかったのか、聞いて忘れてしまったのか定かではありません。ですが、父のことで母が嘆いたのはその夜だけでした。
それまで母を平凡な人だと思っていました。父に寄り添って、当たり前に家に居て、家事が得意で、堅実に家を守っていました。私も社会人となり、自分の方が母よりも世の中のことを知っているような気になっていたかもしれません。それが、父が倒れたことで一転します。
意思がぶれない
恐ろしく度胸がある
人のせいにしない
真っすぐに愛して、結果、強くて優しい人でした。
欠点は、ちょっとやりすぎること…。
父が倒れるまで、私は母という人を本当には知らなかった。
庭には母が植えた花が毎年咲きます。芍薬、あやめ、鉄線、都忘れ…。
どれも初夏に咲きます。紫の花が好きだったのでしょう。

さて、父の左足は幸いにも切断せずにすみました。あの時左足を失っていたら、その後の人生は全く違っていただろうと思います。運がまだ味方についていてくれました。
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