最後の「お帰り!待ってた」(54-8)
- fairfax3939
- 2017年8月18日
- 読了時間: 1分

2016年1月、父が最期を家で迎えるための準備をして、病室に迎えに行きました。「さぁ、お父さん!帰るよ」と声をかけると、苦しそうな表情だった父が、一瞬笑顔を見せました。そして、いきなり点滴の管を引き抜いたのです。「わかった、わかった、帰るから。慌てないで。看護師さんが来るまでもうちょっと待って」と笑いました。私は嬉しかった。父の命の終わりが近くなっても、父を家に連れて帰ると決めたことに、父が「それでいい」と私に示してくれたようで私は嬉しかった。父の決して楽ではなかった人生の、その終わりが、父の気持ちに沿うものにしてあげられそうで私は嬉しかった。父には嬉しい気持ちのまま、生き切って欲しかった。
介護タクシーに乗って、父は帰ってきました。1月の末だというのに暖かで、運転手さんは緊張もあってか、大汗をかいていました。22年前、不自由な体になって家に帰った時と同じように、母が取り付けたエレベーターで父は帰ってきました。
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